ブランディングという言葉は、長いあいだ、見え方をそろえる仕事を指していました。
ロゴ。色。書体。言葉づかい。それを一冊にまとめて納める。 決めたことが守られていれば、ブランドは保たれる。そういう前提でした。
いま、その前提が崩れています。
作るものの量が、急に増えたからです。
動画、記事、ページ、メール、投稿。少し前まで外注していたものを、いまは自分で、しかも大量に出せます。道具が揃いました。手が足りないという理由で止まることは、ほとんどなくなりました。
量が増えると、一冊のガイドラインは追いつきません。 守るべきことが書いてあっても、毎日、何十回も判断する場面には届かない。
そして、判断の回数が増えるほど、こちらの問題が前に出てきます。
作れるようになったのに、何を作ればいいか分からない。
これは、作れなかった頃には見えなかった壁です。作れるようになって、初めて見えるようになりました。
だから、これから必要になるのは、見え方を決める会社ではなく、判断の基準を渡す会社だと考えています。
基準を言葉にすることは、そう難しくありません。
難しいのは、それが毎日の判断に効き続けることです。 書いた本人が半年後に忘れている、というのはよくあることです。
なので、Minimaは基準を紙で渡すのをやめました。
基準は、使う道具が覚えている状態にします。
自社で開発している制作支援ツール「OKAKI」は、使うほどその人の言い回しや固有名詞を覚えていきます。書き起こし、ハイライトの切り出し、文章の下ごしらえ。作る手前の作業を引き受けながら、同時に、その人の基準を蓄えていきます。
出したものを見て、基準を直す。直した基準で、また出す。 これを繰り返すと、ガイドラインではなく、その人の声で書ける状態が残ります。
契約が終わっても残るのは、こちらのほうです。
正しいやり方は、探せばいくらでも出てきます。 ただ、借りてきたやり方をどれだけ足しても、自分の中で腑に落ちていなければ続きません。
逆に、方向さえ合っていれば、少ない力でも流れが生まれることがあります。 頑張る量を増やすのではなく、頑張る方向を整える。そこから手をつけます。
作ったものを渡して終わりにすると、次に迷ったときにまた頼むことになります。 それは事業として楽ですが、頼む側にとっては、ずっと外に判断を置いたままです。
Minimaが渡したいのは、成果物と、それを自分で作り直せる状態の両方です。
技術で数字は動きます。実際に、広告で登録者を一人あたり数十円で増やせることも確かめました。
ただ、そうして集まった方が、次を見に来てくださるとは限りませんでした。 一方で、数字としては小さいチャンネルから、高単価の会が満席になることもあります。
数字が動いても、事業が動くとは限らない。 見ているのは、その事業がその人に合っているかどうかのほうです。
代表のタイキです。
15年以上、店舗、教育、医療、モビリティ、ECサイト運営など、業種の違う事業のコンサルティングや商品開発に関わってきました。
現場の実務を見てきて、ずっと気になっていたことがあります。
うまくいっている人は、自分の基準を持っている。 うまくいっていない人は、誰かの基準で動いている。
差は、たいていそこでした。
正しい戦略を立てても、動けない人がいます。 マーケティングを学んでも、結果が出ない人がいます。 やり方を知らないからではなく、その手前が決まっていないからです。
私自身も長いあいだ、「正しいやり方」を探していました。 数字を追い、計画を立て、正解を学びました。
ただ、振り返ってみると、うまくいったのはいつも、 「なんか面白そう」と思って動いたときでした。
その感覚は、そのままでは事業になりません。 言葉にして、値段をつけて、届く形にする必要があります。
まだ言葉になっていない感覚を、続けられる事業の形にすること。 それが、自分の仕事だと考えています。